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日本語ジャーナル:日本語を「知る」「教える」

学習者の出身国について知ろう!-③韓国

皆さんが日本語を教えている学習者はどこから来ていますか。学習者の出身国、出身地域についてどれぐらい知っていますか。日本語や日本文化を教えるだけでなく、学習者の国や文化にも関心を持ち、少しでも知っておくと、思いがけない会話のきっかけになったり、学習者の考え方を知る手掛かりになったりすることもあるかもしれません。第3回は韓国です。

韓国の基本情報

国名 大韓民国

首都 ソウル

人口 約5千2百万人

宗教 キリスト教(プロテスタント、カトリック)、仏教など

言語 韓国語

日本のお隣の国、韓国。古くから人の行き来も多く、文化、言語、習慣なども日本と共通するところがあります。最近では、韓流ドラマ、映画、K-popの他、韓国料理、美容法など話題に事欠かない国ですね。東京の新大久保を始め、コリアンタウンもますます活気づいていています。

韓国の学習者

韓国と言えば「学歴社会」「教育熱心」というイメージがありますね。実際、英語をはじめとして子どものころから様々な習い事をしている人が多いようです。英語以外の外国語学習にも熱心で、文法的に近く、学びやすい日本語は昔から学習者の多い言語のひとつです。

あちこちにある日本語学校では、年齢、性別問わず、幅広い学習者が日本語を勉強しています。会社員は出勤前の朝のクラス、主婦は昼間のクラス、夕方や夜のクラスには学生や仕事帰りの会社員、それぞれの生活スタイルに合わせて気軽に、時間があるときに勉強しています。何年も休んでいてまた学び直す人や他の外国語と並行して日本語を勉強する人もいるそうです。

似ているようで違う 日本語と韓国語

日本語と韓国語は文法がよく似ていることで有名です。そのためもあり、韓国人の日本語学習者は他の国の学習者よりも習得が早く、上級レベルに達する人が多いイメージです。しかし、よく似ているとは言ってもやはり外国語です。似ているだけに母語の文法ルールを日本語の学習にも持ち込んでしまって、なかなか間違いが直らないということも。助詞で苦労するのはどこの学習者も同じですが、「コーヒーを好きです」「先生を会います」などは韓国語話者もよく言う助詞の間違いです。

他の言語の話者にとっては複雑に感じられる日本語の文法項目でも、共通点の多い韓国語話者はごく自然に理解できることがよくあります。しかし、例えば授受表現は、他の多くの言語と同じく韓国語にも「あげる」「もらう」だけで「くれる」はないので、韓国人学習者もそれほど涼しい顔をしていられないようです。また、敬語があることも同じですが、韓国の敬語は絶対敬語で、外の人に家族のことを話すときにも敬語を使います。そして、一歳でも年上の相手には敬語を使う必要があるので、韓国人に「初対面で年齢を尋ねられた」という話をよく聞きますね。逆に日本人は年齢の話は避ける傾向があるので、韓国の習慣を知らないとびっくりしてしまいます。

おもしろいのは、それほど儒教精神が根付いていて年上を敬う文化なのに、韓国人に言わせると「日本語は悪口が少ない」ということです。そういえば、イギリス人にも同じようなことを言われたことがあります。もしかすると、日本語は悪口のバリエーションが少ないのかもしれませんね。

双子みたい?韓国語と日本語の語彙

ここ20年ほどの間に何度も押し寄せる韓流ブームは現在もとどまるところを知らない勢いです。韓流ドラマ、映画、K-popの影響で、「アニョハセヨ」「サランヘヨ」といった韓国語はすっかり耳慣れたものになりましたね。また、ドラマや映画を見ていれば「あ、日本語と同じ!」と気が付く言葉がたくさんあるでしょう。

 

鞄:カバン 가방

簡単:カンタン 간단

約束:ヤㇰソㇰ 약속

無料:ムリョ 무료

家族:カジョク 가족 

 

ここに挙げたのはごく一部で、まだまだたくさんあります。こうして見ると、韓国が中国、台湾、ベトナムなどとともに漢字圏に含まれている理由がわかりますね。こうした似ている語彙の存在は韓国人が日本語を(同様に日本人が韓国語を)学ぶときには有利に働くものです。しかし、「母語の発音のままでもなんとなく通じるけれど、本当はちょっと違う」というものは要注意でもあります。通じてしまうだけに、なかなか発音の癖が直りにくかったり、発音が違うことに話している本人が気づいていなかったりすることもあります。教師のほうでも学生の発音に慣れてしまわないで、タイミングを見て注意することも必要でしょう。

近くて遠い?遠くて近い?韓国

何かと気になるお隣の国、韓国。他の国の人には見分けがつかないほどよく似ている日本人と韓国人。根本的な文化も共通している、似ているところがたくさんあります。しかし、ものの考え方、習慣、気質、態度などは異なる部分も多く、中には正反対と言えるものも存在します。(材料や調味料などは同じものが多いのに、薄味の日本料理に対し、辛いことで有名な韓国料理はそのひとつと言えるかもしれません。)

どうしても遠い国から来た人たちについては「外国人だからしかたがない」と許容されるのに、見た目や文化背景が近い韓国や中国の人たちは日本人と同じ感覚、常識を求められてしまうことがあります。それがわかっているはずの日本語教師でも、時には韓国人、中国人学習者の言葉や態度に他の地域から来た人たちに対するよりも強い違和感を持ってしまうことがあるかもしれません。そういうときには、よく似ていても彼らはやはり違う文化圏から来た人たちであることを少し意識する必要があるでしょう。そうすれば、学習者が日本語学校の外で損をしないように「あ、それは日本ではちょっとね」「日本人はそういうことはしません」と教えることもできますし、何よりも自分自身が教室で学習者の態度にイラっとすることが減るのではないでしょうか。

シリーズ第3回はお隣の国、韓国を取り上げました。いかがでしたか。世界中のあちこちからやってくる日本語学習者。その学習者の出身国や地域、言語をひとつひとつ詳細に勉強するのは現実的ではありません。しかし、相手のことに興味を持ち、教師側からも「知りたい、教えてほしい」というシグナルを送ることで、学習者にも「伝えたい」という気持ちを芽生えさせることは可能なのではないでしょうか。そうした学習者の気持ちは、日本語学校の外の世界でよりスムーズに日本人と接するためにもきっと役立つはずです。

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