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日本語ジャーナル:日本語を「知る」「教える」

令和5年度日本語教育能力検定試験を受験される方へ

日本語教育能力検定試験は、日本語教師を目指す人にとって必須の試験です。採用に当たっては、日本語教育能力検定試験に合格していることを条件の一つにしている日本語学校も少なくありません。ここでは、令和5年度の日本語教育能力検定試験の受験を考えていらっしゃる方向けに、今から始める試験準備のポイントをご案内します。

早めに試験準備を開始しよう

日本語教育能力検定試験は毎年10月に行われます。2023年1月1日現在、令和5年度の試験の実施要項は発表されていませんが、同じような時期に行われるものと思われます。試験まではまだ時間はあるかもしれませんが、まずは早めに試験準備を始めることをお勧めします。

日本語教育能力検定試験に向けて勉強したことは、そのまま日本語教師として持っておかなければならない知識になります。そのため、試験勉強をすることがそのまま日本語教師としての力を向上させることにもつながります。

まだ日本語を教えた経験がない方であれば、試験勉強の中でさまざまな新しい発見があり、日本語教師への関心が更に高まると思います。また、既に教えていらっしゃる方であれば、ご自身の授業と検定試験の知識を連動させことで相乗効果が生まれます。検定試験の知識をもって授業を改善させたり、授業での実践によって検定試験の理解を深めたりすることが可能です。

早めに試験準備を始めることで「覚悟」も決まり、準備のための日頃の時間の使い方なども自然とより効率的になります

早めに過去問を解いてみよう

試験準備の進め方にはいくつかのルートがあります。

①参考書などで一通り全範囲の知識を付ける→問題集に取り組む→過去問に取り組む

②過去問に取り組む→参考書などで分からなかったところを調べる→問題集に取り組む

③問題集に取り組む→参考書などで分からなかったところを調べる→過去問に取り組む

これ以外にもさまざまな進め方があると思います。基本的にはご自身に合った進め方で進めるのがいいと思いますが、過去問をできるだけ早く一通り解いてみることを強くお勧めします。できれば、休みの日などにまる1日を使って、本試験と同じタイムテーブルで何も調べないで解いてみて、採点までしてみることです。

過去問を最初に解くのを勧めするのは、今の自分の実力と試験に合格するのに必要とされる点数との間にどのぐらいの差があるのかを客観的に測ることができるからです。また、自分の苦手分野も知ることができます。その結果、合格するのに何をしなければいけないのか、そのためにどのぐらいの時間がかかるのかが明確に見えてきます。

もちろん、日本語教育については全く何も勉強したことがないという方であれば、いきなり過去問を解くのは難しいかもしれません。そういう方の場合は、過去問に取り組むのは多少勉強してからでも構いませんが、それでもできるだけ早めに過去問に目を通しておいたほうがいいでしょう。

過去問は毎年、春頃に前年度分が発売されます。例えば、『令和3年度日本語教育能力検定試験問題』は、2022年春に株式会社凡人社から発売されました。タイミングによっては前年度の試験問題が発売されていないこともあると思いますが、その場合は一昨年度の試験問題を購入されることをお勧めします。大切なことは、直近の試験問題をチェックすることよりも、本試験の難易度を体感することです。

準備にかける時間は分野によってメリハリを付けよう

過去問などを解いて苦手な分野が判明し、それが文法や音声などの出題頻度の高い分野であった場合は、そういった分野の対策にかける時間を他分野より増やし、文法や音声などの勉強を優先させるようにしましょう。

参考書などで一通り全範囲を網羅的に勉強することは悪いことではありませんが、試験には必ず出題される項目と、あまり出題されない項目があります。それらを同じ時間をかけて対策するのは効率的ではありません。過去問に触れるタイミングが遅くなると、得てしてあまり試験に出ない項目にも時間を割いてしまいがちです。

文法は本試験の出題比重としても最も重い分野の一つです。その一方、文法が苦手という方もたくさんいらっしゃいます。そういう方は、まずは文法の入門書を一通り最後まで読んでみることをお勧めします。知識を定着させるために、内容を自分でノートにまとめてみたり、関連する文法の問題を並行して解いてみたりするのもいいでしょう。その中で、よく分からないところが出てきたら、その疑問点を一つ一つ解消していくことで、理解も深まります。

音声も本試験の出題比重の大きい分野の一つです。過去問の試験ⅡのCDを実際に聞いてみて、理解が不十分なところ、苦手なところを確認しましょう。音声分野は出題範囲が決まっているので、比較的試験対策はしやすい分野です。その一方、専門用語も多く、発音記号や口腔断面図など日頃あまりなじみのない内容も含まれますので、対策を後回しにしがちな分野でもあります。苦手意識を持たずに、積極的に取り組むことで、ぜひ得意分野にしてください。

音声と並んで合否を分けると言われているのが、試験Ⅲの最後に出てくる記述式問題です。まずは過去問を使って実際に400字の答案を書いてみることをお勧めします。所定の字数で書けなかったという方は、早めに書く訓練を始めたほうがいいでしょう。マークシートで問われる知識とは異なり、書く力はすぐには身につきません。記述式問題の対策問題集も出ていますので、苦手な方はそのような問題集を使って、基礎からしっかりと学ぶこともお勧めします。

令和5年度の検定試験を受験するメリット

日本語教育能力検定試験については、令和6年度以降、どのような扱いになるのかがまだ決定していません。現在、日本語教師の国家資格化の動きの中で、新しい試験について「日本語教育の質の維持向上の仕組みに関する有識者会議」で検討が続けられており、今後は会議の場を移して詳細な検討がなされることになっています。

現在のところ、現職日本語教師については経過措置が取られることになっており、現職日本語教師の中で日本語教育能力検定試験に合格している人は、講習を受けることで新しい試験が免除される方向で議論が進んでいます。

この新しい試験については、試験の内容や難易度などについて具体的にはまだ何も決まっていないため、これから試験を受験する人にとっては、試験形式や問題内容が十分に分かっている現在の日本語教育能力検定試験に合格して経過措置を利用するのも一つの方法かと思われます。

2022年の海外からの入国制限の緩和以来、留学生等の日本語学習者の入国は予想以上に増えており、教育現場からは日本語教師不足の声も聞こえてきます。まずは、令和5年度の日本語教育能力検定試験に合格し、その上で令和6年春からでも日本語を教え始めるという積極的なキャリアパスを描くことも可能かと思われます。

執筆:新城宏治

株式会社エンガワ代表取締役。日本語教育に関する情報発信、日本語教材やコンテンツの開発・編集制作などを通して、日本語を含めた日本の良さを世界に伝えたいと思っている。

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