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日本語ジャーナル:日本語を「知る」「教える」

学習者の出身国について知ろう!-④モンゴル

皆さんが日本語を教えている学習者はどこから来ていますか。学習者の出身国、出身地域についてどれぐらい知っていますか。日本語や日本文化を教えるだけでなく、学習者の国や文化にも関心を持ち、少しでも知っておくと、思いがけない会話のきっかけになったり、学習者の考え方を知る手掛かりになったりすることもあるかもしれません。第4回はモンゴルです。

 

モンゴルの基本情報

国名 モンゴル国

首都 ウランバートル

人口 約341万人

宗教 チベット仏教など

言語 モンゴル語(国家公用語)、カザフ語

 

日本語教師を目指す皆さんの将来自分が担当するであろう教室には、どこの地域の出身者がいますか。やはり中国人、韓国人、ベトナム人あるいは欧米から来た人たちでしょうか。そんな中でモンゴル人というと日本語学習者というイメージは少し薄いかもしれませんね。しかし、モンゴルでは日本留学は長年若い人たちの憧れであり、近年再びその熱が高まっているそうです。

外国語習得能力が高い?モンゴル人学習者

日本語を話すモンゴル人と言うと、思い出すのはやはりお相撲さんではないでしょうか。同じスポーツでも野球やサッカーなどの外国人選手は、挨拶や片言の日本語フレーズを覚えて帰国される方が多いようですが、お相撲さんたちは流ちょうな日本語でインタビューを受けるイメージがありますね。そのためもあって「モンゴル人=日本語が上手」と思われているようですが、実際のところはどうなのでしょうか。

モンゴル人は大草原で移動しながら生活する遊牧民の子孫であり、「視覚/聴覚能力に秀でている」と定評があることは確かです。その能力が言語学習にも有利に働くのか、モンゴルに赴任されていた経験のある先生によると、特に年少者の場合3か月の日本滞在プログラムで格段に会話力が伸び、相手をモンゴル人だということを忘れて会話してしまうくらい、上手に話せるようになって帰ってくることがしばしばだったそうです。

また、大国ロシア(旧ソ連)との結び付きが強く、近年は変化しているかもしれませんが、以前はごく普通にロシア語が話せる人も多くいたそうです。身の回りで外国語が耳に入る環境で育つと、外国語学習に対する抵抗がなくなり、身構えることなく自然に新しい外国語に向かうことができるのかもしれません。

共通点が多いモンゴル語と日本語

「日本語に近い(似ている)言語は?」という質問に真っ先に上がる答えは「韓国語(朝鮮語)」ですが、比較的話者が多い言語でその次というとトルコ語か、モンゴル語になります。韓国語と日本語は兄弟と言ってもいいくらいよく似ていますが、トルコ語やモンゴル語は語順や文法に共通点があるという感じです。モンゴル語は動詞の活用の仕組みなども似ていて、「て形」に該当するような活用形もあるそうです。モンゴル人にとっては日本語の文法は比較的理解しやすいと言えますね。

言語と文化は密接に結びついているので、モンゴル語では家畜(馬、牛、羊)や乳製品(チーズやヨーグルト)に関する語彙が豊富です。馬はモンゴル語で「モリ」と言いますが、雌か雄か、何歳馬かによって呼び方が変わります。日本でも成長するにつれて名前が変わる出世魚などもいますので、クラスで自分の国での呼び方と比べてみると、おもしろい授業ができそうですね。

残念ながら、発音の面ではモンゴル語は難しいそうです。でも、挨拶や短い言葉ならカタカナ読みでも通じる可能性は高いです。モンゴル人の学習者と話す機会があったらぜひ試してみてください。

 

・こんにちは(相手が一人):サインバインノー

・こんにちは(相手が複数):サインバィツガノー 

・こんにちは(上記に対する返事):サイン、サインバインノー

・ありがとう:バヤルッラー

・さようなら:バヤルタイ

 

また、日本語で「マジで?」というタイミングで「ヤクシテー」と言うと、「そんな言葉知ってるの?」とウケるかもしれません。「わかった?」と確認したいときには「ザーヨ」。わかったら「ザー」と返ってくるはずです。

寒さ厳しいモンゴルでの暮らし

一般的にモンゴルと言えば、草原での「ゲル」と呼ばれるテント暮らしを想像しますね。ゲルとはモンゴル語で「家」のこと。まさに自然と共にある生活です。ただ、都市部は現代化していて、ロシア風の街並みが見られます。また、首都ウランバートルは世界で一番寒い首都と言われ、寒さが一番厳しい時期にはマイナス30度になることも。うっかり窓際に置いた缶コーラが数時間で凍ってしまい爆発したという経験をお持ちの先生もいらっしゃいました。日本で生活していては想像のつかない寒さです。

それほど冬の寒さが厳しい地域ならさぞ春が待ち遠しいだろうと思いますが、実はモンゴルでは春は人気のない季節。少しずつ気温が上がって気持ちのいい季節が訪れる前には、必ず砂嵐がやって来ます。髪や服が砂まみれになってしまうので「春は嫌い」という人が多いとのことです。そんなモンゴルからやってきた学習者の目には桜舞い散る日本の春はどのように映っているのでしょうか。赤道直下の国から来た人たちでもぐったりとする日本の夏を体験する前に、美しい日本の春を感じてもらいたいですね。

 

シリーズ第4回はモンゴルを取り上げました。いかがでしたか。世界中のあちこちからやってくる日本語学習者。日本では意識しないほど当たり前のことも、学習者たちの国ではそうでないことがよくあります。「あれ?」と思ったら、インターネットなどで調べるのもいいですが、直接学習者たちに質問してみてはいかがでしょうか。こちらから「知りたい、教えてほしい」というシグナルを送れば、学習者たちもきっと喜んで説明してくれるでしょう。「伝えたい」「伝わった!」という気持ちは、日本語学校の外の世界でよりスムーズに日本人と接するためにもきっと役立つはずです。

 

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