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日本語教育の質の維持向上の仕組みに関する有識者会議8―法案提出に向け、最終報告案の骨格まとまる

文化庁で2022年5月31日から月1回程度のペースで開催されている「日本語教育の質の維持向上の仕組みに関する有識者会議」は、日本語教師の国家資格の法制化に向けた詳細を検討する有識者会議です。2020年~2021年に「日本語教師の資格に関する調査研究協力者会議」が取りまとめた「日本語教育の推進のための仕組みについて(報告)」をベースとしながら、日本語教員の国家資格などについて具体的な検討を進めています。

パブリックコメントに寄せられたさまざまな意見

日本語教育の質の維持向上の仕組みに関する有識者会議(以下、本会議)は、2023年1月25日(水)に第8回の最終会議がオンラインで行われました。会議では、年をまたいで行われたパブリックコメント(意見募集)の結果を参考にして、最終報告案の骨格がまとめられました。パブリックコメントには、日本語教師などから大変多くの意見が寄せられました。

 

意見募集の概要

  • 期間:令和4年12月16日(金)~令和5年1月13日(金)
  • 告知方法:文化庁ホームページ
  • 意見受付方法:文化庁ホームページに掲載

 

意見の提出状況:

  • 意見総数:903件(1,597項目)
  • 意見者内訳:団体から計235件、個人から計1,362件

日本語教師の国家資格~経過措置と筆記試験

内容ごとに寄せられた意見の内訳を見てみましょう。( )は意見数です。

 

・日本語教師の国家資格に関すること(706)

・日本語教育機関の認定制度に関すること(376)

・日本語教育の質の維持向上に関する仕組みの創設について(316)

・新たな制度に必要な基盤整備等(162)

 

圧倒的に多かったのは日本語教師の国家資格に関する意見ですが、その過半数が「日本語教師の登録に関する経過措置」に関する意見、3割弱が「筆記試験」に関する意見でした。現職の日本語教師の皆さんにとっては、経過措置によってご自身がどのようにして登録日本語教員になれるのかは最も気になるところでしょうし、もし筆記試験を受けなければならなくなった場合は、その筆記試験がどんな試験になるのかも大いに気になるところだと思います。

経過措置については5年程度の十分な期間を設けるべきといった意見や、試験の代替としての講習は受講しやすいオンデマンドで実施してほしいという意見は、多くの日本語教師が賛同する意見ではないかと思います。

その一方、経過措置についての方向性については、筆記試験免除(講習などによる代替)の対象範囲を広げてほしいという意見と、質の確保の観点から筆記試験免除そのものが不要という正反対の立場の意見があるようです。前者の背景の一つには、日本語教育能力検定試験に合格していない教師が新たに試験を受けなければならなくなった場合、ベテラン教師の離職によって日本語教師不足が起こる恐れがあるということがあります。

筆記試験の中身についても、基本的な知識を問う問題にしてほしいという意見や難易度を下げるべきではないという意見、試験問題の公開については、サンプル問題を早めに公開すべきという意見や非公開にすべきという意見、記述式問題については、なくてもいい・必要だという両方の意見があり、日本語教育関係者の中でもさまざまな意見があることが分かりました。筆記試験の詳細については、今後具体的に検討されていくことになると思われます。

日本語教育機関の認定制度に関すること~やはり気になる経過措置

「日本語教師の登録に関する経過措置」同様、日本語教育機関の認定制度についても経過措置に関する意見が多数ありました。ここでも、やはり5年程度の余裕を持った経過措置期間を求める声が挙がっていますが、その背景として、コロナ禍による外国人の入国制限に伴い離職した日本語教師が多い現状が挙げられています。

ここでも「日本語教師の国家資格に関すること」同様、試験を課すことがベテラン教師の喪失を招く恐れがあるという意見が寄せられています。日本語教師が不足気味というこのタイミングで日本語教師の質と量をどう担保するかというのは、非常に難しい問題であると思われます。

また、「日本語教育の質の維持向上に関する仕組みの創設について」では、日本語教育の質の維持向上を図るための仕組みの全体の方向性に関する意見が7割強を占め、さまざまな意見が寄せられました。

法案提出に向けて

「日本語教育の質の維持向上の仕組みに関する有識者会議」は、今回の第8回会議をもって終了しました。今後は、文化審議会国語分科会日本語教育小委員会に議論の場を移して、詳細を詰めていくことになります。日本語教師の皆様には引き続き注視していただきたいと思います。

会議でまとめられた「日本語教育の質の維持向上の仕組みについて(報告)」を踏まえて、2023年1月23日から既に始まっている第211回通常国会に、いよいよ法案が提出される予定です。防衛予算や少子化対策など大きなテーマが目白押しの今国会ですが、日本語教育関係者にとっても日本語教師の国家資格化の実現に向けた大切な機会になりますので、ぜひ注目していただきたいと思います。

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