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日本語ジャーナル:日本語を「知る」「教える」

日本語教育能力検定試験の傾向と対策3 ―「言語と教育」を総整理

ここでは、令和5年度の日本語教育能力検定試験を受験される方向けに、その傾向と対策について考えます。「言語と教育」は実によく出題される分野です。検定試験の出題範囲は50項目に分かれますが、その中の17項目が「言語と教育」含まれますので、実に試験全体の3分の1を占めることになります。中でも特に出題頻度が高い「言語教育法・実習」に絞って整理します。

まずは外国語教授法を総整理

外国語教授法はオーディオ・リンガル・メソッドとコミュニカティブ・アプローチを中心に出題されます。それに加え、タスク中心の教授法、ナチュラル・アプローチの4つが頻出の教授法と言っていいでしょう。 以下、教授法、フォーカス、シラバス、キーワード、提唱者、特徴に分けて整理すると、わかりやすいと思います。

①オーディオ・リンガル・メソッド(AL法)

何にフォーカスするか:フォーカス・オン・フォームズ (形式にフォーカスする)

シラバス:構造シラバス

キーワード:ミム・メム(模倣暗記)練習、パターン・プラクティス、ミニマル・ペア

提唱者:フリーズ

特徴:コミュニケーション力 ×

②コミュニカティブ・アプローチ(CA)

何にフォーカスするか:フォーカス・オン・ミーニング (意味にフォーカスする)

シラバス:機能シラバス

キーワード:インフォメーション・ギャップ、ロールプレイ、ディスカッション

提唱者:ウィルキンズ

特徴:正確さ×

③タスク中心の教授法

何にフォーカスするか:フォーカス・オン・フォーム(基本は意味中心のコミュニケーション活動を行いながら、必要に応じて言語形式にもフォーカスする)

シラバス:タスク(課題)シラバス

キーワード:タスク

特徴:AL法とCAのいいとこどり

④ナチュラル・アプローチ

シラバス:話題シラバス

キーワード:i+1のインプット

提唱者:テレル、(クラッシェン)

次にシラバスを総整理

次にシラバスについて整理します。シラバスは教授項目、つまり何を教えるかの「何を」に当たる部分です。前述の教授法と合わせて整理しておくのがいいでしょう。以下、シラバス、内容、例、関連する教授法に分けて整理します。

構造シラバス

内容:文型積み上げ式、日本語教科書の主流(例:~は~です/~も~です)

関連する教授法:オーディオ・リンガル・メソッド(AL法)

②機能シラバス

内容:言語の持つ機能で分類 (例:依頼/許可/提案、など)

関連する教授法:コミュニカティブ・アプローチ(CA)

③タスク(課題)シラバス

内容:具体的な目標を達成する(例:旅行の計画を立てる/銀行口座を開く、など )

関連する教授法:タスク中心の教授法

④話題シラバス

内容:特定の話題についての語彙や表現を学ぶ(例:私の家族/日本の教育、など )

関連する教授法:ナチュラル・アプローチ

⑤場面シラバス

内容:言語の使用場面で必要な語彙や表現を学ぶ(例:スーパーで/市役所で、など)

関連する教授法:サバイバル・ジャパニーズ

⑥技能シラバス

内容:四技能の中の特定のスキルを伸ばす(手紙の書き方/論文の書き方、など )

関連する教授法:四技能別の教授法

パターンプラクティス

最後に、オーディオ・リンガル・メソッド(AL法)の代表的な練習方法であるパターンプラクティスについて整理します。

①変形練習

食べます → 食べました

②代入練習

ラーメンを食べました。

おすし → おすしを食べました。

③拡張練習

ラーメンを食べました。

友達と → 友達とラーメンを食べました。

昨日 → 昨日、友達とラーメンを食べました。

④完成練習

昨日、友達と……

→ 昨日、友達とラーメンを食べました。

⑤応答練習

昨日、何を食べましたか?

→ 昨日、ラーメンを食べました。

この中で、「おすし」「友達と」「昨日」などの教師が出す指示を「キュー」と言います。合わせて覚えておきましょう。

 

執筆:新城宏治

株式会社エンガワ代表取締役。日本語教育に関する情報発信、日本語教材やコンテンツの開発・編集制作などを通して、日本語を含めた日本の良さを世界に伝えたいと思っている

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