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日本語ジャーナル:日本語を「知る」「教える」

日本語教育能力検定試験 文法の問題の傾向を知ろう

この記事では、令和5年度の日本語教育能力検定試験を受験される方向けに、過去問を通してその傾向と対策について考えます。まず文法について、令和元年度~令和5年度の直近の5年分の過去問から傾向を見てみましょう。まだ過去問を見たことがない方には難しく思えるかもしれませんが、これからしっかり検定対策用のテキストなどを使って勉強していけば大丈夫です。「NAFL 日本語教育能力検定試験合格セット」の文法の巻もわかりやすいと評判の教材です。それらを使って該当箇所特によく復習しておくようにしてください。R4=令和4年度の試験を指します。

品詞別では、動詞、形容詞、助詞に注意

動詞の問題は毎年、試験Ⅰの問題1で出題されます。これまでも、非過去の意味(R4)、自動詞と他動詞(R3)、心理動詞(R2)、直接受身(R1)など、基本的な内容が出題されてきました。

直近の試験では、テ形の作り方と用法(R4)といった具体的な問題が出題されました(書く→書いて)。これは、実際に初級の日本語を教えた経験のある人にとっては易しい問題でしたが、教えた経験のない人は戸惑ったかもしれません。

形容詞は、イ形容詞(大きい)とナ形容詞(静かな)の混同による誤用や例外的な形容詞、指導の際に注意すべき形容詞などについて出題されました(R3)。誤用、例外、注意点など、基本的な形容詞の理解だけではなく、より深いところまでの内容が問われるようになってきていますが、これは日本語教育能力検定試験の回数を重ねるごとに、毎年受験者のレベルが上がってきていることも影響しているのではないかと思われます。

助詞の問題も試験Ⅰの問題1で毎年のように出題されます。これまでは、「の」「で」(R4)、「に」「と」(R2)、「で」「の」(R1)などの問題が出題されていました。また格助詞だけではなく、取り立て助詞、接続助詞、終助詞についての理解を問う問題(R4)や、日本語教育でよく問題になる「は」と「が」の違いを問う問題(R4)なども出題されています。

品詞については、動詞、形容詞、助詞を中心にさまざま問題が出題されていますので、抜け漏れのない対策が必要です。

自動詞・他動詞の問題は頻出

自動詞・他動詞に関する問題は試験Ⅰの問題1だけではなく、文章題でもほぼ毎年のように出題されていますので、注意が必要です。

これまでは自動詞と他動詞の見分け方とその例外、自動詞と他動詞のペア、自動詞と他動詞の機能や特徴の違いなどの問題が出題されています(R4)。また、ヴォイスの受身と関連させて、選択肢の中から「迷惑受身」を選ばせるような問題も出題されています(R1)。

自動詞と他動詞については、他動詞が変化を引き起こす動作原因を表し(ドアを開ける)、自動詞がその変化や変化した結果を表す(ドアが開く)という基本的な機能を理解しておきましょう。その上で、自動詞と他動詞のペアがあるもの(消える・消す、など)、自動詞がない他動詞は受身形で自動詞を代替し(置く・置かれる、など)、他動詞がない自動詞は使役形で他動詞を代替する(降る・降らせる、など)ということまで説明できるようにしておくといいでしょう。

授受表現は語用論の観点から考える

ヴォイス関連で、受身と並んで出題されやすいのが授受表現(やりもらい)です(R4)。「あげる」「くれる」「もらう」が本動詞として使われる場合と補助動詞として使われる場合の機能の違い(物の授受・恩恵の授受)、また授受表現の主語や視点がどこにあるかといった問題が出題されています。

授受表現については、会話文を読んで(試験Ⅱでは聞いて)不適切な理由を考えさせるような問題が出題されることがあります。授受表現を使うべき場面で使わなかったり、あるいは使うべきではない場面で使ったりする状況を考えてみましょう。そして、その不適切な理由を、「あげる」「くれる」「もらう」の各授受表現の機能と合わせて説明できるようにしておきましょう。

テンス・アスペクトは関連させて理解                  

テンス(時制)とアスペクト(動作がどの段階か)は密接に関連していますので、個別ではなく、まとめて理解しておくといいでしょう。

「ている」「てくる」などの意味・用法の違いは、試験Ⅰ問題1でよく出題されます(R4)(R2)。また、ル形やタ形が表す未来・現在、過去・完了などの例文を選ばせる問題、複文の従属節の相対テンスに関する問題などが過去に出題されています(R2)。

ル形が未来・現在のどちらを示すかは述語によって変わってくる(おやつを食べる・泣き声が聞こえる)ことや、タ形の過去と完了の違い(昨日、牛丼を食べた・昼ご飯はもう食べた)については、しっかりと自分の言葉で説明できるようにしておきましょう。相対テンス(旅行に行くとき、スーツケースを買った・旅行に行ったとき、スーツケースを買った)については、従属節のテンスが主節に依存することを確認しておきましょう。

ややこしいことも多いところなので、必要に応じて図式化したり、例文を考えたりしながら理解しておくといいでしょう。

苦手な人が多いダイクシス

毎年のように出題される問題の中で、苦手としている人が多いのがダイクシス(R3)(R2)の問題です。

発話場面に依存して意味が決定する言語表現のことをダイクシスと言うこと。ダイクシスには、場所(指示代名詞 ここ・そこ・あそこ、など)、人(人称代名詞 私・あなた・彼、など)、時間などを表す表現(明日・来月、など)があること。場所(指示代名詞)では文脈指示(昨日、居酒屋に行った。そこは従妹が経営している店だ)はダイクシスに当たらないので注意が必要であることなどを押さえておきましょう。

待遇表現は謙譲語に注意

待遇表現については、特に、謙譲語Ⅰ(お持ちする・ご案内する、など)と謙譲語Ⅱ(丁重語)の違いが分かりにくいという方が多いようです。動作の対象者を立てるのが謙譲語Ⅰ、対面者を立てるのが謙譲語Ⅱ(丁重語)であるという基本的な機能を理解した上で、特定の形式を持つ謙譲語Ⅰ(伺う・申し上げる・拝見する、など)と謙譲語Ⅱ(参る・おる・申す・いただく・いたす、など)はまとめて覚えておくようにしましょう。

日本語教育能力検定試験では、毎年のように出題される項目があります。上記に挙げた項目は、過去問で出題頻度が高かった項目です。まずはこれらの項目について、参考書などを使ってしっかりと理解し、自分の言葉で説明できるようにしておくことをお勧めします。

執筆:新城宏治

株式会社エンガワ代表取締役。日本語教育に関する情報発信、日本語教材やコンテンツの開発・編集制作などを通して、日本語を含めた日本の良さを世界に伝えたいと思っている。

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