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日本語教育能力検定試験合格発表――令和4年度の振り返りと令和5年度に向けて

2022年12月23日(金)に令和4年度日本語教育能力検定試験の合格発表がありました。ここでは受験者数や合格者数、合格率、受験者のバックグラウンドや主催団体から公表された試験の分析データをご紹介します。令和5年度の検定試験を受験予定の方は、試験準備に役立ててください。

応募者数・受験者数は昨年度から減少

令和4年度日本語教育能力検定試験は2022年10月23日(日)に行われました。今回は、出題範囲が「必須の教育内容」(文化庁)に準じた試験範囲に移行して初めての試験でした。応募者数は8,785人、受験者数は7,076人でした。応募者・受験者は前回の令和2年度の試験から約14%ダウンしました。

応募者数や受験者数の減少の背景には、現在は回復しているとは言え、2022年に新型コロナの影響による外国人の入国制限などがあったことなど、いくつかの要因が考えられます。

合格率は初めての3割超え

令和4年度日本語教育能力検定試験の合格者数は2,182人でした。受験者は7,076人でしたので、合格率は初めて3割を超え30.8%となりました。ここ5年間の合格率は以下の通り徐々に上がって来ていましたが、とうとう30%を超えました。

 

平成30年度(2018年):28.3%

令和元年度(2019年):28.2%

令和2年度(2020年):28.8%

令和3年度(2021年):29.7%

令和4年度(2022年):30.8%

 

合格率の上昇は、試験問題が易しくなっているということではなく、受験者のレベルが上がっていることによるものと考えられます。合格しやすくなっているというよりも、むしろ合格・不合格のボーダー付近での競争がより激化していると考えるべきです。

受験者の属性は大きく変わらず

男女比では女性が74%、男性が26%となりました。また、年代別比では60才以上が18%、50~59才が26%、40~49才が19%、30~39才が15%、20~29才が22%、20才未満が1%となりました。30代以下の割合が若干ですが減少しているのが気になるところです。

受験回数比では、初回が65%、2回目が19%、3回目が9%、4回目以上が7%となりました。職業別比では、会社員等が39%、主婦/主夫が13%、日本語教員(非常勤・個人教授)が12%となりました。これは前年度までの傾向とほぼ変わりありません。

記述式と聴解試験は得点差が付きやすい

日本語教育能力検定試験は、試験Ⅰ、試験Ⅱ、試験Ⅲに分かれます。基本的にはマークシート形式の試験ですが、試験Ⅲの最後に記述式の問題があります。

まず、試験ごとの平均点、標準偏差を見てみましょう。試験によって満点が異なりますので、配点に対する百分率で比較します。平均点が高い順、標準偏差が大きい(得点差が大きい)順に並べると、以下のようになりました。

 

【令和4年度・平均点】

試験Ⅲマーク式(61.7%)

試験Ⅱ(57.9%)

試験Ⅰ(57.7%)

試験Ⅲ記述式(56.3%)

 

【令和4年度・標準偏差】

試験Ⅲ記述式(16.3%)

試験Ⅱ(14.1%)

試験Ⅲマーク式(12.4%)

試験Ⅰ(11.9%)

 

ちなみに前回の令和3年度の試験の平均点、標準偏差は以下の通りでした。

 

【令和3年度・平均点】

試験Ⅱ(62.8%)

試験Ⅰ(59.9%)

試験Ⅲマーク式(57.0%)

試験Ⅲ記述式(51.6%)

 

【令和3年度・標準偏差】

試験Ⅲ記述式(21.0%)

試験Ⅱ(14.1%)

試験Ⅲマーク式(11.8%)

試験Ⅰ(11.2%)

 

令和4年度と令和3年度を比較してみると、試験Ⅲマーク式の平均点がかなり上がっています。しかしながら、令和3年度の前年の令和2年度では、試験Ⅲマーク式の平均点は令和4年度よりさらに高い65.2%でした。つまり、年によって試験Ⅲマーク式の平均点はかなり変動します。しかしながら、標準偏差の順番は令和4年度と令和3年度で変化はなく、これまでと変わらず試験Ⅲの記述式と、試験Ⅱの聴解試験で得点差が付いていることが分かります。

日本語教育能力検定試験は試験が年1回であること、また受験料がかなり高額であることから、本気モードで受験される方が多いと思われます。年度により試験ごとの平均点は若干上下しますが、得点のばらつきは変わりません。10人受験して7人は不合格という極めて合格するのが難しい試験であることも変わりません。特に得点差が付きやすい記述式と聴解試験については、ライバルを抜きんでる力が必要です。もちろん、マークシートでミスしないことが大前提です。

令和5年度受験予定の方は早めの準備を

令和5年度の日本語教育能力検定試験の実施要項はまだ発表されていませんが、主催団体のJEESのホームページには「令和5年度以降の日本語教育能力検定試験における受験申込方法について(予告)」という案内が既にアップされています。それによれば、「令和5年度以降の日本語教育能力検定試験より、受験申込は原則としてインターネットによる受付」となるとのことです。このことから令和5年度の日本語教育能力検定試験は、ほぼ令和4年度の試験に倣って行われるものと思われます。

執筆:新城宏治

株式会社エンガワ代表取締役。日本語教育に関する情報発信、日本語教材やコンテンツの開発・編集制作などを通して、日本語を含めた日本の良さを世界に伝えたいと思っている。

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