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日本語ジャーナル:日本語を「知る」「教える」

外国人の入国制限緩和の状況(2022年5月21日時点)

2022年3月1日に外国人の入国制限が解除されました。これにより、3月は留学、技能実習、特定技能、短期滞在などの在留資格で入国する外国人が急増しました。この傾向は4月以降も更に拡大しています。全国各地の大学や日本語学校は海外からの新入生を迎え、対面授業も再開し、活気が戻ってきました。

入国者数上限の更なる引き上げ

ゴールデンウィーク中にアジア・ヨーロッパを歴訪した岸田首相は、最後の訪問国のイギリスで、「6月には他のG7(主要7カ国)諸国並みに円滑な入国が可能となるよう水際対策を更に緩和する」と、日本の水際対策の更なる緩和を表明しました。

3月1日の外国人の入国制限解除以来、政府はその受け入れの上限数を1日5000人(3月1日)→7000人(3月14日)→1万人(4月10日)と段階的に引き上げてきましたが、ゴールデンウィーク明けの新型コロナの新規感染者数の状況などを見た上で、この上限数を6月から2万人に引き上げると発表しました。

外国人観光客の受け入れも再開へ

また政府は、入国者受け入れ上限数の引き上げと合わせて、現在停止されている外国人観光客の受け入れを6月から再開する方向で調整しているとのことです。ビジネスや留学目的での新規入国再開から、いよいよ観光客の受け入れに進んできました。但し、はじめは個人旅行ではなく、行動管理のできる団体旅行からということになりそうです。

余談ですが、G7(主要7カ国)はもちろん、中国を除くアジアの多くの国では既に観光客を受け入れています。このゴールデンウィークも、多くの日本人が海外旅行に行きました。

2022年ゴールデンウィーク旅行予約ランキング<海外旅行>(エイチ・アイ・エス)

1位:ハワイ(前年比388%)

2位:バンコク(前年比736%)

3位:マニラ(前年比500%)

4位:ソウル(前年比292%)

5位:バンクーバー(前年比3400%)

一連の政府の水際対策の緩和について、世論も受け入れる意見が多くを占めるようになってきました。先の岸田首相の方針に対して、5月7日、8日に行われたJNNの世論調査では、「新型コロナウイルスの水際対策を緩和すべき」が48%と、「緩和すべきではない」の38%を上回りました。4月に行われたNHKの世論調査では「外国人の入国制限を続けるべきだ」が57%、「緩和すべきだ」が32%と、外国人の新規入国について非常に保守的な傾向が見られましたが、コロナ対策と経済の両立を図るべきという意見が優勢を占めるようになってきました。

4月の新規入国者数

出入国在留管理庁の統計データを見てみましょう。5月15日に発表された、「外国人入国者数及び日本人帰国者数の推移(令和3年4月~令和4年4月)(速報値)によれば、4月に入り入国者数が更に急拡大していることが分かります。2022年1、2、3、4月を比較します。

 

外国人新規入国者総数

2,015人(1月)→5,206人(2月)→48,418人(3月)→124,339人(4月)

うち留学

15人(1月)→89人(2月)→14,810人(3月)→46,889人(4月)

うち技能実習

0人(1月)→5人(2月)→10,163人(3月)→37,689人(4月)

うち特定技能1号

0人(1月)→0人(2月)→1,758人(3月)→3,692人(4月)

※外国人再入国者数

27,721人(1月)→23,216人(2月)→34,037人(3月)→33,219人(4月)

※日本人帰国者数

39,725人(1月)→35,226人(2月)→90,389人(3月)→101,504人(4月)

 

3月に入り外国人新規入国者数が急増、特に留学と技能実習が大きく増え、その傾向は4月に入り更に顕著になっていることが分かります。一方、外国人の再入国者数と日本人帰国者数は3月と4月であまり大きくは変わっていません。

そのため6月に1日の受け入れ上限数が2万人に引き上げられることで、その枠内で外国人の新規入国者数が引き続き拡大していく可能性も十分にあると思われます。

これからの日本留学

現在のところ、日本語学校や大学は、2020年、2021年に入学できなかった留学生が一挙に入国していることで、久しぶりに活気が戻ってきています。留学先を変えずに待っていてくれた留学生、オンラインで留学生を繋いでくれた日本語教育関係者には感謝の言葉しかありません。この活況は、少なくとも2022年秋学期ぐらいまでは続くように思われます。

しかしながら、それ以降はどういう状況になるのかは誰も分かりません。新型コロナウイルスの新たな変異株の出現のリスク、ロシアのウクライナ侵攻などの不安定な世界情勢、その他さまざま予測不可能な問題があります。

また、そういった外部的な要因だけではなく、日本留学を考える上でより本質的な問題としては、この2年間の厳しい入国制限により傷ついてしまった日本留学のブランドがあると思います。日本は世界の他の国よりも厳格な水際対策を取りました、特に留学生を含めた外国人の新規入国制限については海外から多くの批判を受けました。日本留学を諦め、他国へ留学先を変えた留学生もたくさんいたと思われます。そういった留学生が抱いた日本に対する負のイメージを払拭し、日本に対する留学生からの信頼を回復できるか。留学生受け入れを再開した日本が、これから考えていかなければならない大きな問題であると思います。