令和3年度日本語教育能力検定試験の合格発表がありました。受験された皆様の結果はいかがでしたでしょうか。ここでは各試験の平均点や標準偏差などの発表されているデータをご紹介します。次回受験予定の方は、試験準備に役立ててください。
試験Ⅲが難化
日本語教育能力検定試験は、試験Ⅰ、試験Ⅱ、試験Ⅲに分かれます。基本的にはマークシート形式の試験ですが、試験Ⅲの最後に記述式の問題があります。
まず、試験ごとの平均点、標準偏差を見てみましょう。試験によって満点が異なりますので、配点に対する百分率で比較します。平均点が高い順、標準偏差が大きい(得点差が大きい)順に並べると、以下のようになりました。
【令和3年度・平均点】
試験Ⅱ(62.8%)
試験Ⅰ(59.9%)
試験Ⅲマーク式(57.0%)
試験Ⅲ記述式(51.6%)
【令和3年度・標準偏差】
試験Ⅲ記述式(21.0%)
試験Ⅱ(14.1%)
試験Ⅲマーク式(11.8%)
試験Ⅰ(11.2%)
ちなみに前回の令和2年度の試験の平均点、標準偏差は以下の通りでした。
【令和2年度・平均点】
試験Ⅲマーク式(65.2%)
試験Ⅱ(62.2%)
試験Ⅲ記述式(57.4%)
試験Ⅰ(56.3%)
【令和2年度・標準偏差】
試験Ⅲ記述式(16.6%)
試験Ⅱ(14.6%)
試験Ⅰ(11.6%)
試験Ⅲマーク式(10.9%)
令和3年度と令和2年度を比較してみると、前年に比べ試験Ⅲのマーク式および記述式が大きく難化したようです。どちらも平均点が大きく下がっています。特に記述式は標準偏差が大きくなっています。多くの受験者が試験Ⅲで苦戦し、特に記述式で大きな得点差が付いたものと思われます。
ちなみに各試験の最高点も発表されていますが、試験Ⅰ、試験Ⅱ、試験Ⅲの満点取得者はいませんでした(試験Ⅲの記述式は20点満点の取得者がいました)。前回の令和2年度の試験では試験Ⅱには満点取得者がいましたが、今回の試験Ⅱの最高点は39点(40点満点)でした。試験Ⅱは試験ⅠやⅢに比べて、出題される範囲や形式が毎年同じなので、比較的満点を取りやすいのではないかと思われます。しかしながら、標準偏差は比較的大きいことから、得点差が付きやすいところでもあります。
試験Ⅲの難化の背景
試験Ⅲは、測定内容が「原則として出題範囲の区分横断的な設問により、熟練した日本語教員の有する現場対応能力につながる基礎的な問題解決能力を測定する」とされています。「区分横断的」「現場対応能力」「問題解決能力」など、複合的な応用力を測る問題、「予め覚えておけば解ける」問題というよりは「その場で考えて解く」問題が多く出題されます。そのため、考え方によってはいろいろな答えが導かれる可能性もあります。
また、記述式はマークシート形式とは異なり、与えられた選択肢から答えを選ぶのではなく、自分で考えて一から解答を書かなければならないので、多くの受験者にとって負担が大きいところです。加えて、前回令和2年度の記述式試験ではキーワードが与えられて、それを使って解答を作成するという問題形式でしたが、今回は令和元年度以前の形式に戻ってキーワードの指定はありませんでした。このことも難易度を上げた一因ではないかと思われます。
令和4年度受験予定の方は早めの準備を
日本語教育能力検定試験は、令和4年度の試験より「必須の教育内容」(文化庁)に準じた出題範囲に移行することが既に発表されています。受験を予定されている方はご注意ください。詳しくは、以下をご参照ください。
日本語教育能力検定試験の出題範囲の移行について
http://www.jees.or.jp/jltct/pdf/R4syutsudai.pdf
新型コロナウイルス感染症の影響により在宅で過ごされる機会も増えていると思います。受験予定の方は、今のうちからコツコツと早めの準備を始めましょう。アルクでは日本語教育能力検定試験合格を目指す方のために「NAFL日本語教師養成プログラム」をお勧めしています。