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日本語ジャーナル:日本語を「知る」「教える」

令和3年度日本語教育能力検定試験を振り返る

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令和3年度の日本語教育能力検定試験は2021年10月24日に行われました。受験された方はお疲れ様でした。アルクでは既に解答速報を公開していますが、ここでは改めて令和3年度日本語教育能力検定試験について振り返ります。(新城宏治)

オーソドックスな設問、細かい変化

令和3年度の日本語教育能力検定試験は実施要項にもある通り、前年と比較して、試験の内容や出題範囲に変更はありません。試験Ⅰ、Ⅱ、Ⅲの各試験の問題数も変化はありませんでした。設問もオーソドックスなものが多く、難易度はともかく、試験後に調べても正解が分からないような問題は少なかったように思います。

特に試験Ⅰはその傾向が強かったようです。もともと試験Ⅰの測定内容は「原則として、出題範囲区分ごとの設問により、日本語教育の実践につながる基礎的な知識を測定する」となっており、キーワードの意味を正しく理解していればそれだけで解ける問題が、これまで以上に多かったように思います。但し、キーワードを正しく理解していないと、似たような専門用語も多いので、試験の時に「あれ? これ何だっけ?」となってしまいます。知識の「深さ」というよりも「幅広さ」、優先的に出題される基礎項目についての正確な理解、地道な知識の積み上げが大事であることを改めて感じました。これは試験Ⅱ、試験Ⅲにおいても基本的には同じです。

試験Ⅱ、試験Ⅲでは、前年の試験から若干の変化がありました。

まず試験Ⅱですが、問題2の選択肢がより複雑になりました。問題2は「学習者の発音上の問題」を選択肢から選ぶ問題です。従来は発音上の問題を「1つだけ選ぶ選択肢」が多かったのですが、これを「2つ組み合わせた選択肢」から選ぶ問題が増えました。このため、これまで以上に音声の正確な聞き取りが必要になりました。

また試験Ⅲの最後の記述式の問題は、令和2年度は指定したキーワードを使って答えさせる形式でしたが、令和3年度ではそれ以前のようにキーワードの指定がなくなりました。キーワードがなくなったことによって解答が書きやすくなったという方もいれば、書きにくくなったという方もいたと思います。

NOT問題の増加で時間が足りなくなる?

問題の中身自体ではありませんが、令和3年度の試験の受験者の中で、「時間が足りなかった」「最後まで解き終わらなかった」という方がいらっしゃったら、その原因の一つにNOT問題の増加があるかもしれません。

ここで言うNOT問題とは、正しい選択肢を選ばせるのではなく、「~ではないもの」「不適当なもの」「他の選択肢と異なるもの」を選ばせる設問形式で、問題冊子のその部分が太字になっているものを指します。

NOT問題は正しい選択肢を選ぶ問題より、解くのに時間がかかります。なぜなら、正しい選択肢を選ぶ問題は正解が分かれば他の選択肢を読む必要はありませんが、NOT問題は全ての選択肢を読んだ上で、各選択肢正しいのか/間違っているのかを一つ一つ吟味しなければならないからです。

試しにNOT問題の数を数えてみたところ、令和2年度→令和3年度で以下のような増加が見られました。

令和2年度→令和3年度

試験Ⅰ:10→13(問題1と問題2は年度によって問題数が変わらないので除外しました)

試験Ⅱ:2→4

試験Ⅲ:14→17

試験問題自体が必ずしも難しくなったとは言えないものの、NOT問題が増えたことで、短時間で問題を読み、理解し、選択肢を選ばないと時間切れになってしまいます。タイムマネージメントがこれまで以上に重要になりそうです。

また、焦ってしまうと、NOT問題を「正しい選択肢を選ぶ問題」と読み間違えて解答してしまうようなミスも犯しがちです。

令和4年度の日本語教育能力検定試験

さて、令和3年度の日本語教育能力検定試験を受験された方には、2021年12月24日に合否結果通知が発送される予定です。その後、例年であれば2022年春には『令和3年度日本語教育能力検定試験問題』が書店店頭に並び、令和4年度の実施要項が発表され、7月ぐらいから出願が始まります。

令和4年度の日本語教育能力検定試験について現時点で明らかになっていることが一つあります。それは令和3年度の出題範囲記載されている「令和4年度の試験より『必須の教育内容』に準じた出題範囲へ移行する予定」ということです。令和3年度までの「基礎項目」と令和4年度以降の「必須の教育内容」の違いは、以下の記事に対照表をまとめてありますのでご参照ください。

https://nj.alc-nihongo.jp/entry/20210401-kentei-youkou

「必須の教育内容」に挙げられているような基礎的な知識を正確に理解することの重要性や、NOT問題の増加等に伴うタイムマネージメントの必要性は、来年度以降も続く可能性がありますので、ご注意ください。

執筆:新城宏治

株式会社エンガワ代表取締役。日本語教育に関する情報発信、日本語教材やコンテンツの開発・編集制作などを通して、日本語を含めた日本の良さを世界に伝えたいと思っている。

 

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