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日本語教育能力検定試験の傾向と対策4 ー記述式問題、対策のポイントは答案を書く前の準備

ここでは、令和5年度の日本語教育能力検定試験を受験される方向けに、その傾向と対策について考えます。今回は、多くの方が苦手としている「記述式問題」の攻略法をお伝えします。日本語教育能力検定試験は基本的にマークシート形式の問題ですが、唯一、「記述式問題」では文章を書かなければなりません。その対策はマークシート形式の問題とは若干異なってきます。

「記述式問題」を採点してもらえるのは上位6割

令和5年度の日本語教育能力検定試験は2023年10月22日(日)に行われます。試験当日の時間割は毎回同じですが、各試験の順番と試験時間は以下のようになっています。

 

試験Ⅰ:90分

試験Ⅱ:30分

試験Ⅲ:120分

 

「記述式問題」は試験Ⅲの最後の問題17で出題されます。時間で言えば、試験Ⅲを順番に解いていった場合、16時過ぎぐらいからとりかかることになると思います。この時間帯になると多くの受験者の疲労はピークに達し、集中力も落ちてきます。ここで、最後の力を振り絞って「記述式問題」に挑むことになります。

ところが、せっかく「記述式問題」の答案を書いても、採点対象になるのは、実はマーク式による問題の総得点が上位60%以上の人たちだけです。この60%というのがどのぐらいの人数かと言うと、令和4年度の試験の場合、試験Ⅲのマークシート形式の受験者数は7,055人、「記述式問題」の受験者数は4,279人でした(もちろん試験Ⅲの中で記述式問題も解いているので、正確には「採点対象人数」ということかと思われます)。差し引き、約2700人の受験者はマークシート形式で涙を飲んだということになります。まずは、マークシート形式の問題で上位60%に入れるように力をつけましょう。

令和4年度日本語教育能力検定試験結果の概要(公益財団法人 日本国際教育支援協会)

答案を書き始める前に

「記述式問題」には、どのぐらいの時間を充てたらいいのかという質問をよく受けます。私の感覚としては、試験Ⅲがマークシート形式問題80問と記述式問題で試験時間が2時間(120分)ですので、マークシート形式問題に90分(1問1分強)、「記述式問題」に30分ぐらいを充てることをお勧めします。

30分の中で、まずは考えをまとめるのに10分程度は使うようにしましょう。考えがまとまらないうちにいきなり書き始めると、いつの間にか内容がずれていったり、全体としてバランスの悪い答案になったり、字数が足りなかったり書きたいことが書ききれなかったりするものです。

まずは問題文をよく読み、何が問われているのか、それに対して自分はどのように考えるのか、そう考える根拠や理由は何か、何か具体的な例はあるか、自分の意見に対して考えられる反論はあるか、その反論に対して効果的な反駁はあるか、などを問題冊子の余白にメモしていきましょう。ここでしっかりと考えをまとめることができるかどうかが、いい答案になるかどうかのポイントになります。

考えがまとまれば、後はそれを文字化していく作業です。文法的な間違いや誤字・脱字などに注意しながら書き進めて行きましょう。一通り書き終わったら、必ず見直しをします。1回で完璧な答案を書ける人はあまりいません。丁寧に読み返しながら、わかりにくいところ、不自然なところ、もちろん誤字・脱字などがあれば直していきましょう。

どのような準備をするか

「記述式問題」は答案が書けなければ点数になりませんので、まずは「書く」練習を定期的にする必要があります。試験まであまり文章を書く機会がないのに、急に試験の時に合格点の取れる答案を書こうというのは無理があります。

しかしながら、毎日忙しくて「書く」練習の時間がなかなか取れないという方もいるでしょう。そういう方は、頭の中で答案を考えるだけでも効果があります。通勤時間や電車の待ち時間を使ってもできる練習です。何かのテーマやトピックについて、自分の考えをまとめ、その根拠や理由をできるだけたくさん頭の中で挙げてみましょう。これが挙げられるかどうかも、日頃、そのような訓練をしているかどうかで大きく違ってきます。

考えるテーマは本試験の過去問や、記述式問題の対策書に出ている問題を使うのがいいでしょう。

執筆:新城宏治

株式会社エンガワ代表取締役。日本語教育に関する情報発信、日本語教材やコンテンツの開発・編集制作などを通して、日本語を含めた日本の良さを世界に伝えたいと思っている

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