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日本語ジャーナル:日本語を「知る」「教える」

外国人の入国制限緩和の状況(2022年2月19日時点)

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日本政府は新型コロナウイルスのオミクロン株の流入抑制のために行っている外国人の新規入国停止措置を緩和することを発表しました。2021年11月30日の入国停止措置から3カ月、2021年1月14日から長らく続く留学生などが入国できない状況にようやく改善の兆しが見えてきました。日本語教育関係者にとって待望のニュースです。

現時点で明らかになっていること

岸田首相をはじめとした政府関係者の記者会見やインタビューをまとめると、現時点で明らかになっていることは、おおよそ以下の通りです。

・現在行われている外国人の新規入国原則停止は2月末をもって終了する。

・日本人も含めた入国者数の上限を1日3500人から5000人に戻す。

・入国の際の待機期間を現在の7日間から3日間に短縮する。さらには3回目接種を受けた非指定国からの入国者は待機措置を免除する。

・留学生やビジネスパーソンの入国に当たっては学校や企業などの受入責任者管理前提とする。

・受入責任者申請手続きは一元的にオンラインで完結するよう簡素化する。

政府は2022年1月下旬以降、卒業や修了に対面授業が必要な国費留学生87人の入国を例外的に認め、その後に約300人、合計約400人の入国できなければ卒業などに支障が出る主に国費留学生の入国を認めてきましたが、今回は私費留学生も含めての緩和となります。

また今後に向けてですが、状況を見ながら受け入れ上限人数のさらなる拡大、待機期間のさらなる短縮が考えられます。受入責任者の監督については2021年11月8日~30日に一旦制限解除された際の仕組みやフローが参考になるかと思いますが、こちらも複雑な手続きや準備書類の簡素化により受け入れのスピードアップが求められます。

2021年11月の入国制限緩和時の参考記事

留学生・技能実習生の入国制限緩和の動き

私費外国人留学生の入国前から行動制限解除までのフロー

入国制限緩和の背景

オミクロン株が日本で広がる兆しを見せた2021年11月30日に日本政府から入国停止措置が発表された際には、ある種「止むを得ない」といった雰囲気が日本社会にはあったように思います。

しかしながら、外国人の新規入国を停止しても新型コロナの感染者数は減るどころか、急増していきました。外国人の新規入国を停止することが、新型コロナの感染を抑えることには効果がないことが明らかになっていきました。また、オミクロン株による新型コロナの新規感染者数自体、2月になり減少に転じ始めています。外国人の新規入国を再開する環境は整いました。

この間、経済界、教育界、与党、そして海外から日本政府に対して、日本の水際対策を緩和するよう、さまざまな声が寄せられました。

十倉雅和(経団連会長)

「外国人の新規入国禁止という現行の水際措置も、現実的ではない。オミクロン株について不明なことが多かった初動段階では、大きく網をかけることは正解だった。この変異株による感染者が大勢を占めつつあり、見直す時期に来ているのではないか。ビジネスは国内だけで成り立っているわけではない。海外との往来の断絶で、外国企業との技術協力やM&A交渉などに支障をきたしている」(1月24日の定例会見)

永田恭介(国立大学協会会長)

「現在は、日本国政府の緊急避難的な水際措置として、原則として全ての国・地域からの外国人の新規入国停止という方針が出ており、国立大学はこれを遵守しています。国費留学生については、一定の入国緩和も打ち出されており、国立大学はこれまで国費留学生の一部を海外から受け入れてきましたが、その際も、渡日前の国費留学生に対する指導から、入国後の対応まで、厳格な管理体制をとってまいりました。

 国費留学生と同様に、この入国緩和策が多くの待機している私費留学生にも適用されることを望みます。そのような場合も、一人一人の留学生に対して、個々の大学(と附属病院)および国立大学全体の連携協力により、国の方針に沿って責任を持ってコロナウイルス感染拡大を抑えてまいります。(中略) コロナ禍においての外国人の渡日については、懸念される方々がいらっしゃることは承知しています。しかし、未来に向けた人材育成は絶えることなく続いていかなければなりません。真に皆様のご理解をお願いするところです」(2月7日 国民の皆様へ 未来ある留学生の受け入れについて)

日本が入国制限を続けることで、海外においては日本留学希望者の留学先の他国への変更、海外の大学と日本の交換留学プログラムの停止などの具体的な弊害も出始めています。相互に授業料を免除し合う交換留学プログラムにおいて、日本から留学生は送るのに海外からの留学生は受け入れないという不均衡は大きな問題となりつつあります。

気になる日本社会の内向き志向

一連の流れの中で、世論は水際対策をどのように受け止めてきたのでしょうか。先の永田国大協会長の談話のタイトルは「国民の皆様へ」となっており、国民の中の入国制限の緩和に懸念を持っている一定数への配慮が示されています。

NHKは毎月定期的に世論調査を行っています。その中で、岸田内閣の支持率と合わせて、水際対策についても2021年12月と2022年2月に調査を行っています。

 

2021年12月調査

内閣支持50%、不支持26%

新たな変異ウイルス「オミクロン株」の水際対策として、政府が外国人の新規の入国を原則停止とした対応を、どの程度評価するか尋ねたところ、「大いにする」が43%、「ある程度する」が38%、「あまりしない」が10%、「まったくしない」が4%でした。

 

2022年2月調査

内閣支持54%、不支持27%

オミクロン株の水際対策として、政府は、2月末まで、外国人の新規入国を原則停止しています。これに対し、経済界や留学生からは、入国制限の緩和を求める声が出ています。制限を続けるべきか、緩和すべきか聞きました。「続けるべきだ」が57%、「緩和すべきだ」が32%でした。

 

外国人の新規入国を停止することが、新型コロナの感染を抑えることには効果がないことが明らかになってきた2月においても、外国人の新規入国停止を続けるべきだと答えている人が57%います。日本社会の内向き志向が気になるところです。